消 防 団 の 任 務

組織法第1条【消防の任務】
 消防の任務は、現有する施設及び人員を最大限に活用して、
  1.火災から国民の生命、身体及び財産を保護すること。
  2.水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害による被害を軽減すること。
  ※この任務は、消防職員も、消防団員にもいささかの違いはない。

関係法令に基づく任務
 消防法関係
1 屋外火災予防行政に協力する。(第3条)
  消防長又は消防署長並びに消防吏員の職務として実施されるが、これに側面的に協力する。
2 立入検査を実施する。(第4条の2)
  火災予防上特に必要があると認めて、消防長又は消防署長の命令があったときに、
 火災予防のため消防対象物に立ち入って、必要な検査又は質問をすることができる。
3 火災警報の発令時に、火災特別警戒等に従事する。(第22条第3項)
4 火災警戒区域設定に協力する。(第2 3条)
5 火災現場における消防警戒区域の設定に従事する。(第2 8条)
6 火災の鎮圧と人命救助に従事する。(第2 9条)
7 火災時においては水利使用権に従事する。(第30条)
8 消防の火災調査に協力する。(第31条)
9 消防の救急業務実施に協力する。(第3 5条の5)
水防法関係
  市町村における水防の責任は、水防法第3条により規定され、市町村等の水防組織、
 水防活動、費用負担等を定めている。
  消防は、その水防機関として水防活動に従事する任務が課せられている。
災害対策基本法関係
  消防機関は、災害基本法に基づく市町村の防災行政の執行にあたっては、市町村長
の補助機関として、その業務に当たる。

消防団員の災害補償

 消防の任務を遂行するため、自らの生命の危険をも顧みず身を挺して、職務遂行にあた
る場合が多く、毎年不幸にしてその職に殉じ、あるいは負傷するものが少なくない。
 このようなことから、消防団員等が死亡又は障害を受けた場合十分に補償され、後顧の
憂いなく活動できるようにするため、市町村条例により補償することとなっている。
 災害補償の種類は、他の公務補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、傷
害補償、遺族補償および葬祭補償を受けることとされている。

安 全 管 理

1 消防における安全管理の意義
 安全管理ということは、団員の安全を確保するということである。
 消防機関は、国民の生命、身体および財産を災害から守るという任務を遂行するため
に災害現場に出動し、この任務遂行こそが消防の組織目標である。
 火災現場では、危険要素が大量にある環境下で、安全限界ぎりぎりのところで消防活
動を実施しなければならない。このような中、指揮者も団員も常に安全に対する配慮を
 しながら、任務を達成すべきである。
  『安全管理は、それ自体が目的でなく、組織目標を達成するための課程であり、さら
には、任務遂行を前提とする積極的行動対策である。』
 積極的行動対策とは、効率的で安全な活動を行うための幅広い創意工夫のある対策を
いい、人命検索に援護注水体制をとるとか、転落危険のあるところで命綱をとるとか、
落下危険のある瓦を注水により事前に落とすなどの安全を確保するための行動対策であ
る。

2 安全管理の指向
 安全管理は、安全意識を高めることが基本である。
 事故は大きなマイナスになっても、決してプラスになり得ないことである。
 事故には至らなかったが、ヒヤリとしたこと、ハットしたことは誰で経験しているこ
とであると思うが、事故防止のためには、潜在危険やヒヤリとしたこと、ハットしたこ
となどそこ目を向け、こうした要因を排除することが必要であり、これを裏返すと安全の
先取明こつながることを忘れてはならない。
 潜在危険の排除には、まず危険に対する感覚、感受性を養い、危険を正しく予知・予濁し、事前に必要な手を打つことであり、安全対策につながる。

災害現場の特性と危険性

1 拡大危険と対象物の不安定性
 火災は、短時間のうちに拡大し、危険の度合いもこれに比例し増大する特性がある。
 火災にあった建物は、多かれ少なかれ何らかの被害を受けて、正常な状態や機能を
失っている。
 平素は、全く安全と信じきっている建物が、火災によりすべて危険を前提として行
動しなければならない。
2 行動障害と危険性
 火災現場は、常に混乱しており、乱雑なのが普通である。通行を予期しない所を通
 り、登るべきでない所を登ったり、入るべきでない所を入ったりするなど、平常の行
動バターンと異なる行動をとることとなり、さらには、階段にはホースが延び、屋内
は収容物が散乱してしまうのである。
  こうした障害を突破して消防の目的を達成しようとするところに危険性が潜在する
のは当然と考えなければならない。
3異常心理と危険性
 火災現場では、指揮者であれ、団員であれ、穏やかで物静かでいられる人はない。
 緊張や興奮で、声が大きくなったり、早口になって必要な言葉が抜けて、要領を得
なくなったりして意思の伝達が図りにくくなる。
  このことは、関係者はも勿論であるが消防隊員も同様であり、思考力の低下につな
がりそれだけ安全に対する配慮が欠け、危険性が高まる要因となる。
4 疲労と危険性
 火災現場の苦しい煙や熱の中で、長時間の活動に耐えることは大変な忍耐力を必要
 とし、身体は極度に疲労する。
 思考力は減退し、注意力も散漫になる。危険性は疲労に比例して増大していくこと
を考慮しなければならない。
 一般的には、極度の緊張や慌てた初動時と、疲労が蓄積し緊張の緩む後半時に、事
故の発生危険が高くなることを認識しなけれぱならない。

災害現場における安全管理

 事故は、人(団員)と物(資機材、落下物等)の衝突によって発生するといえ、事故
発生には、不安全な状態があったか、不安全な行動をしたか、或いはこの双方が一緒に
 なった場合に起こり、事故の背景にある潜在危険要因に目を向けなければならない。
1 物的危険要因の予知・予測
 建物や施設及び構造自体に不備欠陥があり、不安全な状態にある時を物的危険要因と
いい、火災現場においては、この要因が顕著である。
  この物的危険要因があると、団員の安全行動と無関係に事故発生の可能性がある。
 その対応策としては、事前に危険を予知・予測し危険に対する感受性を高めていくこ
 とにより、相当の効果が期待できる。
2 環境的危険要因に対する配慮
 季節的な気象条件や天候に左右されることや現場の立地状況による潜在危険に配慮し
ていく必要がある。
  (降雨、降雪による路面の滑りや凍結、視界不良こよる危険性、路面の不整地、段差、
勾配、火災と同時に作り出される炎、煙、有毒ガス、停電による暗闇での活動など)
3人的危険要因の排除
 火災現場の危険要因として、大きなウェイトを占めるのが、団員の行動或いは行為に
よるものである。
 人それぞれに性格、考え方が異なるよ引こ、安全か不安全かの行動をとるのも個人差
がある。
 ある団員が危険な行動をとった場合、その団員は自分の判断でとった行動であるが、
指揮者からみればその行動が危険な行動に見えても、団員は危険を自覚していない場合
が多いo
 不安全な行動をとる判断は、次のことが考えられる。
@ 安全に対する知識がなかったり、認識が不足している。危険に対する感受性が不足
  してし、る。
A 能力が不十分でやれない。または完全に発揮できない。
B 知識や能力があってもやらない。意識が低下していてやらない。

4 団員の自己管理の徹底
 火災現場における安全管理の基本は、適正な自己管理である。団員個々は、消防活動
に耐え得る体力、気力及び技術の向上に努め、常に自己の安全を確保する気概を持つこ
が大切である。

5.指揮者の責務
指揮者は、消防活動を効率かつ安全に行うため、火災の推移とその環境を見極め、団
の安全確保に努める責務がある。
指揮者は、団員の行動の誤り、取扱いミス、いわゆる不注意に起因する事故を防止す
ため、注意力や集中力を散漫させる疲労などの肉体的な要因、緊張弛緩等の精神的な
要因に配慮し、安全管理の徹底を期さなければならない。

参考

幹 部 の 心 得

1.幹部の心得
幹部は、指揮下の部隊活動の全責任を負わなければならない。このことは火災防御活
動で指揮をとるのが幹部であるということができまず。
 指揮判断の要素をまとめると次の通りである。
@ 火災の様相
 ・ 何が燃えているのか。
 ・ どんな燃え方をするのか。
A 火災の影響
 ・ 人の危険はないか。
 ・ どっちそこ延焼していくのか。
G 消火手段
 ・ どうすれば消火できるか。
 ・ 資機材は十分か。
 ・ どの資機材を使えばよいか。
 ・ 応援を求める必要があるか。
C 消防体制
 ・ 部隊や筒先の配備をどうするか。
 ・ 重大事態は起きないか。
                    など

 幹部は、火災現場に臨んでは、自分の職位の範囲で、常にこれらのことを整然と把握
し、判断し、実行する必要がある。
指揮統制力
@ 決 断
 火災がこれから、どのように延焼していくか。無駄や犠牲のない防御活動のために
 は、どの方法で活動し、どのくらいの隊を投入し、どのように配備すべきか、など各
 級指揮者(団長・地区隊長・分団長・部長等)の責任に応じた適切な決断が、火災防
 御活動の成果を決定することとなる。
A 包容力
  火災現場での部下の安全は、指揮者の最大関心事であるが、自らの自覚と郷土愛護
 のため積極的に活動している団員の士気をさらに高め、消防団が有機的な活動を維持
 していくためには、部下団員の『この指揮者と‐一緒に活動しよう』という意欲を強く
 することが必要である。部下団員とともそこ消防団活動の成果を味わう一体感の醸成が
 必要である。
  平素から団(地区隊・分団・班)内での話し合いの場を設け、団員同志の意思疎通
 を図り、行事などを開催し互いに信頼し合える雰囲気づくりをするなど十分な配慮を
 すべきである。
3.的確な判断力
@地域消防環境の熟知
A高い技術、深い知識
G 的確な推測
C 情報の入手
4.強じんな気力・体力
@ 不撓不屈の精神力
  強い郷土愛で活躍していても、消防力が劣勢となり後退しなければならないときが
  ある。また、活動の方針を下命しても、部下団員が従えないときがある。
  そのようなときでも、広い知識に基づいた強い信念で、部隊の活動方針を貫き、全
  体として合理性のある防御活動を遂行しなければならない。
A 動揺しない冷静さ
   火災現場のたくさんの喧騒のうち、被害者の心情については、よく理解してやる必
  要がある。
   しかし、いたずらに同情に走ったり周囲の雰囲気や、過大な情報に惑わされてはな
  らない。常に冷静で、場面毎に合理的な方針を持って安全で効率的な防御活動を行う
  よう努力すべきである。
 B 過酷な活動に耐え得る体力
   火災の中には、防御時間も長く或いは活動が体力的に困難となる場合がある。都下
  団員に対して率先して消防団活動を行うだけの体力の維持に努力を払う。

2002年消防学校 講習より抜粋(講師:郡山消防署副所長)